アベンジャーズ/エンドゲーム感想 11年の最後は「観客」によってもたらされた

 

26日の公開初日にエンドゲームを観賞。

ついに観賞してしまった。思えば10年前にアイアンマンを観てから遠いところまで来たものだ。10年ものユニバース構想という連続性を持った映画体験を今後味わえるかどうかわからない。エンドゲームを観終わった後の感情は本当に一生に一度の体験だったと言ってもいいかもしれない。

 

インフィニティーウォーの凄惨な結末から1年待ちに待ち、エンドゲームでアベンジャーズどのような復活を遂げるのか楽しみで仕方なかった。ありとあらゆる予想がファンの間で繰り広げられたが、本編はその予想を幾度も逆手に取り続けた。

そして3時間、どこに辿り着くかわからない逆流の先には期待していた壮大な景色が広がっていた。

 

※以下、本編のネタバレを前提にしているので観賞前の人は未推奨です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実際に観て驚いたのはここまで観客の予想を「ズラす」展開を繰り出してくるとは思わなかったことだ。本作の展開は今まで公開された映画群からある程度の予想は可能であり、実際に本作もその予想の大枠には収まっていた。

 

 

エンドゲームのストーリーはインフィニティーウォー終了後の世界を描く。世界の半分の生命が消えた世界の残酷な静けさを描写しつつ、残ったメンバーはサノスからインフィニティストーンの奪取を以て消えた人間たちの復活を決意する。

 

 

しばらくサノスを探す道中になるんだろうなぁ…と思ったらなんと農場でノンビリ過ごしてるところをアッサリ見つける。そうとわかればと早速攻め入るアベンジャーズだったが、そこにいたのはインフィニティストーンを破壊し、反動で隠居した老人のようにボロボロになったサノスだった。

 

 

サノスへの逆襲が期待されただけに驚かされた。こんなに虚しいアベンジがあるのかと、否応なく先の展開が気になってしまう。だってまだ冒頭の冒頭だ。最大の敵が哀れな姿になっていて、あっけなく逆襲が成功してしまう。

 

 

倒すべき敵も解決の手段もすべて無くなり、舞台はそのまま5年後に移る。またも衝撃的だ。「やられたのですぐやり返して終わり」なのではなく、敗北後の世界を年月を飛ばすことでこれでもかと見せつける。ヒーロー達は敗北を受け入れてそれぞれの人生を歩みだしてる様は胸を締め付けられる。どれだけ負けようと人生は続いてしまうし、それを引きずって生きていかないといけない。恐ろしいぐらいに丁寧な「生き恥」をまざまざと見せつけられる。

 

 

公開前から「タイムスリップ」という予想がされていただけに、観客の想定を逆手に取ってむしろ5年の歳月を積み重ねさせる見せ方は巧みだった。トニーは家庭を持って穏やかに暮らし、スティーブは傷ついた人のカウンセリング、バナーはハルクを受け入れて現状を満喫している。ソーに至っては引きこもりになってビール腹になってフォートナイトで暴言を吐く始末だ(フォートナイト5年経っても人気なのか?)。

時間を経て再び自らの居場所を手に入れた彼らは本当にこの後どうするんだ?という感じだが、映画が進行するにつれその意図が見えてくる。

 

 

 

量子空間に取り残されたスコットが帰還し、量子トンネルを利用して過去にタイムスリップしサノスを倒す。当初からのファンの予想だ。この予想自体は間違っていなかったが、しかし、それは見方を変えれば前作のインフィニティーウォーを否定しているとも取れる。

エンドゲームのタイムスリップ理論では今流れてる時間は不可逆であると設定された。過去に戻ってサノスを倒しても時間が分岐するだけで今現在は何も変わらない。

 

 

じゃあタイムスリップをして何をするのか?それは破壊されたインフィニティストーンを過去作品の時間軸から借りてくるというものだった。

 

 

本当にやられた。そう来たかと。ヒーロー達は手分けして過去にインフィニティストーンが存在する地点を巡る事になる。これは完全に今まで応援したファンへの返礼であり、過去作品すべての賛歌でもある。メタ的に言えば、ユニバースを11年追い続けてきた観客への肯定だ。敗北の物語であるインフィニティーウォーですら統括し、すべて辿ってきた道筋とした。

 

 

ストーン回収のシークエンスではMCUの各時代で起こった裏側を見せつつ、過去作品のセルフオマージュを交える。インフィニティーウォーで最大のヒーロークロスオーバーを見せた次は現在と過去のクロスオーバーだ。燃えないわけがない。

 

 

敗北をそれぞれ引きずっていたトニー、スティーブ、ソーも過去への巡礼でそれぞれの原点になった人物達と邂逅する。

そしてストーンを回収した後は、ついに過去のサノス軍との対決だ。最初にBIG3がサノスと激突。ストーンを持ってなくとも3人を圧倒するサノスに、キャップがついにソーのムジョルニアを手に戦う。その様を見て喜ぶソーもかつてハンマーを降ろせと言われて怒っていたと思うと歴史と成長を感じる。

それでもなお、キャップの盾すら破壊して追い詰めるサノスに対し、インフィニティーウォーから貯めに貯めたエネルギーが全軍集合と「アッセンブル」の一言でついに爆発する。

 

 

今まで劇中で聞くことがなかった「アッセンブル」がエンドゲームで言われるとはわかっていた。わかっていたが、今までの積み重ねの後に言われてしまっては感服するしかない。あの言葉には11年の軌跡が全て詰まっていて、それを再確認したのがエンドゲームの行程だったからだ。

総力戦の末、トニーは死を迎え、ソーは去り、スティーブは自分の人生を取り戻して引退した。あの「アッセンブル」は一度きりで、二度と聞けることはない。インフィニティーウォーの物語が無かったことにならなかったように、エンドゲームの奇跡もまた一回きりでやり直しは効かない。

 

 

今後、MCUが続くとしても、今まで観てきたアベンジャーズはもう存在しない。

 

 

エンドゲームはMCUを全てを統括し、ヒーロー達にふさわしい幕引きを用意した。ここにアイアンマンから続く11年の歴史が完成する。思えば、アベンジャーズ1以降は全て公開初日に劇場で見続けてきた。いくら後で円盤で見返せると言っても劇場での体験は短い期間でしか出来ないし、1作を観れば次の作品は早くても数カ月後だった。それを10年追いかけてきて終着点に辿り着いた感慨は一言で言い表せない。後追いで22作を通して観るのでは得られない感傷だろう。

 

 

あの一回限りだったキャプテン・アメリカの「アッセンブル」にはきっと観客も含まれている。歴史の始まりと終わりを告げたマーク1の音は耳からしばらく離れそうにない。